質権設定者による代理占有の禁止(民法345条)
質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
【司法書士試験対策条文解説】
質権は、質権設定の合意だけでは効力を生ぜず、目的物の引渡しが効力発生要件です(民344)。
この引き渡しは、現実の引渡し(民182‐Ⅰ)、簡易の引渡し(民182‐Ⅱ)、指図による占有移転(民184)でもかまいませんが、「占有改定(民183)」は含まれません。
占有改定による引渡しでは質権者の元に占有がなく、留置的効力が発揮できないからです。そこで、「質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない」と定められています(民345)。
では、質権設定後に質権者が目的物を設定者に任意に返還した場合、質権は消滅するかどうかについてです。2つの説があります。
◇対抗力喪失説(大T5.12.25)
質権自体は消滅しないが、占有がない以上第三者に対抗できなくなるとします。対抗力喪失説でも、設定者は当事者であって第三者ではないから設定者には質権を対抗できます。
単なる一時使用のために返還したら質権が消滅してしまい、質権に基づいて返還請求ができなくなると解するのは不当ですし、質権の本体は優先弁済的効力にあり、留置的効力は二次的効力にすぎないと考えるからです。
◇質権消滅説
設定者への質物の返還によって、質権そのものが消滅するとします。
民法が引渡しを質権の効力要件とし(民344)、また占有改定による設定を禁止したのは(民345)、留置的効力を質権の本質的効力としたものであると解するからです。