転質(民法348条)
質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
【司法書士試験対策条文解説】
「転質」とは、質権者が質物を更に質入れして自己の債務の担保とすることをいいます。
質権設定者(原質権設定者)A、質権者(原質権者、転質権設定者)甲、転質権者を乙とします。転質には、質権設定者Aの承諾を得て設定(甲・乙間で設定)する「承諾転質」と、質権設定者Aの承諾なくして設定する「責任転質」の二つがあります。
承諾転質は民法298条Ⅱ項の準用(民350)で認められています。民法が別に民法348条で転質を認めたのは「自己の責任で」責任転質を認めたものか解されています(判例・通説)。
◇責任転質の法的性格
転質の理論構成については学説が分かれます。
・共同質入説
転質は、被担保債権と質権とを共に質入れすることであるとする説です。質権の付従性を重視し、質権は被担保債権と離れて独立に処分することはできないという考え方に立つます。
転質権者は直接原質権の被担保債権を取り立てることができます(民366-Ⅰ)。
・質物再度質入説(判例・通説)
転質は、質物のみを更に質に入れることだとする説です。転質は質権者が把握した担保価値(質物)の上に質権を設定するものであるという考え方です。
以下、判例・通説の質物再度質入説を前提に話を進めます。
◇転質権の成立要件
転質も転質権設定者甲と転質権者乙との間の質権設定であるから、質権設定契約+目的物の引渡しが必要です(要物契約)。
◇転質権の対抗要件
転質権も甲・乙間における質権設定であるから、転質権者乙による占有の継続が第三者に対する対抗要件です(民352)。
)転質権の設定を原債務者Aに対抗するためには、原質権者甲の乙に対する転質権設定の通知又はBの承諾が必要です(債権質に関する民364又は転抵当に関する377の類推適用)。
転質権の設定は甲乙間で行われる以上、そうしないとAには転質権の設定が不明だからでする。
◇転質の効果
転質権者は目的物を競売し、その売却代金から優先的に弁済を受けることができます。
その場合の権利行使の要件として、転質権の被担保債権のみならず、原質権の被担保債権の弁済期も到来していなければなりません(大S16.7.8)。
そして、先ず転質権者乙が優先弁済を受け、残余があれば原質権者甲が弁済を受けます(なお余りがあれば所有者Aが受けます)。
◇転質権設定者の責任
転質権設定者甲は、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負います(民348‐後段)。
転質権者乙の占有下で地震で質物が壊れた場合、転質権設定者甲は所有者Aに対し損害賠償を免れません。このような重い無過失責任の下で責任転質は認められます。
◇転質権設定者に対する拘束
転質権を設定した以上、原質権者甲は原質権を消滅させてはならないという拘束を受けます。
ですから原質権の放棄、被担保債権の取立て、免除、相殺などは行うことができません。付従性により原質権が消滅し、原質権の上の転質権も消滅してしまうことを防ぐためです。もし、これら処分をしても転質権者に対抗できません。
問題は、原質権の被担保債権額が、転質権のそれを超える場合、超過部分についても甲は拘束を受けるかです。
判例は拘束を否定し、超過部分を得るために原質権の実行を原質権者甲ができると解します(最S44.10.16)。
通説は担保物権の不可分性から、乙は目的物の担保価値全部を把握するからという理由で拘束を肯定します。
◇原質権設定者に対する拘束
転質権を原質権設定者Aに対抗できる場合、すなわち転質権設定の通知又はAの承諾がある場合には、原質権設定者Aも原質権を消滅させて転質権を害することができないという拘束を受けます。
Aは転質権者乙の承諾なくして弁済により原質権を消滅させることができず、弁済しても弁済の効果を乙に対抗することができません。
転質権を対抗できない場合(通知も承諾もない場合)には、Aは甲に弁済ができ、付従性による原質権の消滅とそれによる転質権の消滅を転質権者乙に対抗することができます。