留置権等の規定の準用(民法372条)
第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
【司法書士試験対策条文解説】
◇不可分性(民296)
被担保債権全部の弁済がされるまで、抵当権の効力は抵当目的物の「全部」に及びつづけます。
◇物上保証人の求償権(民351)
物上保証人は他人のために責任を負う点で、保証人と同じです。そこで、物上保証人が抵当権の実行により所有権を失ったときは、保証に関する規定に従い、債務者へ求償してゆくことができるとしました(民372、351)。
◇物上代位(民372)
(イ)目的物の売却代金債権
抵当権者は目的不動産を競売するか、売却代金に物上代位していくか選択できるとするのが通説です。
物上代位したときは被担保債権全額の弁済が受けられなかった場合でも抵当権は消滅し、残債権は無担保債権となります。
(ロ)賃料債権
賃料への物上代位を認められます(判例・通説)。賃料は交換価値のなし崩し的実現であること、これを認めたからといって抵当権設定者の目的物の使用を妨げることにはならないことがその理由とされています。
しかし、転貸料債権への物上代位はできません(最H12.4.14)。たとえば、Aが債権者で抵当権者、甲が債務者で抵当権設定者、乙が甲の抵当不動産を賃借している賃借人とします。
乙が丙に抵当不動産を転貸したときに、転貸人乙が丙から受け取る転貸賃料債権には、物上代位できないということです。乙はAの債務者ではないからです。
ただし、甲と乙が同視できる場合には例外として物上代位が認められます。甲・乙Cの法人格の濫用の場合、賃貸借を仮装した上で転貸借の型を作り出した場合などです。
(ハ)抵当不動産の滅失又は損傷によって受けるべき金銭その他の物
第三者の不法行為によって設定者が取得した損害賠償請求権(大T5.6.28)、火災保険金請求権(大T12.4.7)につき物上代位を認められます(判例・通説)。
◇物上代位権行使の要件
抵当権者が物上代位していくためには「その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければなりません(民304‐Ⅰ)。この差押えを必要とする理由については説の争いがあります。
①優先権保全説
抵当権も物権だから目的物の滅失により消滅しますが、抵当権者保護のために特別に物上代位を認めたものとします(特権説)。この優先権を確保するためには抵当権者自らが差し押え、優先権を公示しなければならないとされます。
②特定性維持説(通説)
抵当権は目的物の交換価値を把握するものだから、物上代位は当然に認められるとします(価値権説)。
民法が払渡し前に差押えを要求したのは、払渡されて債務者の一般財産に混入して、抵当権の対象物がわからなくなるのを防ぐためであるとします。
差押えは誰がした場合であっても特定性が維持されている限りは物上代位が認められるとされます。
③第三債務者保護説(最H10.1.30)
第三債務者が債務者へ払渡した後も物上代位を認めると、二重払いさせられることになるため、払渡し前の差押えを要求したものだとします。つまり、差押えは、第三債務者保護のために必要なのだとするわけです。
◇物上代位権の対抗要件
抵当権の効力が物上代位の目的債権に及ぶことは、抵当権設定登記により公示されているとされます(最H10.1.30)。
ですから、第三債務者保護説からは、予め抵当権設定登記がされていれば、物上代位の対象となる債権が他の債権者により差し押えられたり、第三者に譲渡された場合でも、第三債務者が弁済していない限り抵当権者はなお差押えて物上代位をしてゆくことができることになります。