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抵当権の処分(民法376条)

1 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。

2 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。


【司法書士試験対策条文解説】
◇転抵当
転抵当とは、抵当権者が「その抵当権を他の債権の担保」とすることをいいます(民376‐Ⅰ‐前段)。

たとえば、Aが甲に1000万円の債権を持ち、担保として甲の不動産の上に抵当権を有するとします。このとき、AはBから700万円を借りて、担保として抵当権をBに提供(転抵当)することができるわけです。

転抵当も転抵当権設定者Aと転抵当権者Bとの間の抵当権設定であるから(区別するためAの抵当権を原抵当権、Bの抵当権を転抵当権という)、A・B間の抵当権設定契約が必要です。

転抵当権者Bも抵当権者として目的不動産を競売し、優先弁済を受けることができます。

そのためには転抵当権の被担保債権のみならず、原抵当権の被担保債権の弁済期も到来していることが必要です。

優先弁済の順序は、先ず転抵当権者Bが原抵当権の債権の範囲内で優先弁済を受け、残金があれば原抵当権者Aが他の債権者に先立って優先弁済を受けます。

原抵当権者Aに競売権があるか争いがありますが、判例は原抵当権の被担保債権額が転抵当権の被担保債権額を上回っている場合にこれを認めます(大S7.8.29)。

なお、AがCからも金を借りて更に転抵当権を設定した場合(二重転抵当)のB・C間の優劣は、付記登記の先後によります(民376‐Ⅱ)。転抵当権の設定も物権変動だからです。


◇抵当権の譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・放棄
抵当権者は、その抵当権を同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができます(民376‐Ⅰ‐後段)。抵当権の譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・放棄の4パターンの抵当権の処分方法があることを規定しています。

抵当権の譲渡・放棄とは、抵当権者から「抵当権を有しない無担保債権者」に対して行われる処分のことです。

抵当権の順位の譲渡、順位の放棄とは、先順位抵当権者から「後順位抵当権者」に対してなされる処分のことです。

たとえば、一番抵当権者A(債権400万円)、2番抵当権者B(債権200万円)、3番抵当権者(C債権600万)、無担保債権者D(債権600万円)とします。

抵当不動産の価値が1000万円だとすると、通常はAが400万、Bが200万、Cが400万の優先弁済を受けることになります。

・抵当権の譲渡
Aが抵当権を持たないDに抵当権の譲渡をすると、Aが受けるはずであった優先弁済額400万円は先ずDが受け(Dの残り200万は無担保債権)、Aの優先弁済額は0となります(無担保債権となります)。Cは依然400万円の優先弁済が受けられ、A→Dへの抵当権の譲渡によって影響を受けません。

・抵当権の放棄
Aが抵当権を持たないDに抵当権の放棄をすると、AとDは同順位となり平等に債権額比例して優先弁済を受けます。つまり、Aが優先弁済を受ける400万円を債権額に按分してAとDが4:6の割合で弁済を受けることになります。

A160万円、D240万円ということになるわけです。A・Cのそれぞれの残金は無担保債権となります。Cは依然100万の優先弁済を受け、A→Dへの抵当権の放棄によって影響を受けません。

・抵当権の順位譲渡
Aから後順位抵当権者Cへ「抵当権の順位譲渡」がなされた場合、AとCが優先弁済を受ける400万と400万、計800万を先ずCが優先弁済を受け、Aは残り200万の優先弁済となります(Aの残り200万は無担保債権となります)。Bは依然200万優先弁済を受け、影響を受けません。

・抵当権の順位放棄
Aから後順位抵当権者Cへ「抵当権の順位放棄」がなされた場合、AとCが優先弁済を受ける400万と400万、計800万をAとCは平等に債権額に比例して優先弁済を受けることになります(4:6でAは320万、Cは480万)。Bは依然200万優先弁済で影響を受けません。

なお、Aが担保債権者Dに抵当権を譲渡(放棄)し、他の無担保債権者Eへも抵当権を二重に譲渡(放棄)した場合のDとEとの優劣は、付記登記の先後によります(民376‐Ⅱ)。抵当権の順位の譲渡・放棄の場合も同様です。

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