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留置権の内容(民法295条)

1 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。


【司法書士試験対策条文解説】
留置権とは、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有する場合に、その弁済を受けるまで、その物を留置することができる権利です。

留置権は動産上にも不動産上にも成立する「法定担保物権」です。

ですから、Bが所有の時計をAに修理に出した場合、Bが時計屋に所有権に基づき返還請求をしても、Aは修理代を支払うまでは時計を留置して返還を拒むことができます。

また、借家人が借家に修繕(必要費)を加えた場合も同様であって、借家人は必要費の償還を受けるまでは借家を留置し、明渡しを拒むことができます。

留置権は留置的効力によって債権の弁済を促す機能を持ちます。公平の観点からの規定です。

◇留置権の成立要件は、次の4つです。
・他人の物を占有していること。
・その物に関して生じた債権を有すること(債権と物との牽連(けんれん)性)。
・その債権が弁済期にあること。
・占有が不法行為によって始まった場合でないこと。

◇留置権が成立するには、債権者が他人の物を占有していなければなりません。

他人の物とは債務者以外の第三者の所有物でも留置権の成立を認めるのが通説です。

ですから、C所有の車を借りたBがそれを損傷したので修繕に出した場合、Cからの返還請求に対しAは留置権の主張をすることができます。

◇留置権は「その物に関して生じた債権を有するとき」に、その物の上に成立します(債権と物との牽連性)
(1)債権がその物自体から生じた場合
たとえば、賃借人などがその物に必要費や有益費を加えた場合、所有者からの返還請求に対し、その費用償還請求権を被担保債権として留置権が成立ります。

・建物買取請求権と敷地の留置
借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し建物の買い取りを請求することができます(借地借家13、14)。

この買取代金を担保するため、建物を留置することができますが、さらに敷地まで留置することができるとするのが判例です(大S18.2.18)。

建物の買取代金債権は建物に関して生じた債権であって敷地に関して生じた債権ではないから敷地に留置権は成立しないが、建物留置の反射的効果として敷地の明渡しを拒絶できるとします。

敷地を離れて建物だけの留置は不可能なことからから通説もこれに賛成しています。なお、敷地も占有できますが、賃料相当分は不当利得となります。

・造作買取請求権と建物の留置
家主の同意を得て借家に付加した造作は、建物賃貸借が期間満了又は解約申入れによって終了するときは、家主に買い取りを請求することができます(借地借家33)。

この代金債権を担保するため、造作につき留置権が成立します。

では、建物まで留置することができるかですが、判例は建物の留置を否定します(最S29.1.14)。

造作代金債権は造作に関して生じた債権であり、家屋に関して生じた債権ではないからです。

そうすると、借家人は造作を建物から取りはずして留置することになりますが、これでは借家人の保護に欠けるという批判があります。

(2)債権が物の返還請求権と同一の法律関係又は同一の生活関係から生じたものである場合
たとえば、売主Aで買主Bの売買において、Bからの所有権に基づく引渡請求に対して、Aは売買代金債権を被担保債権として留置権を主張することができます。

(3)債権と物との牽連性を欠く場合
・二重譲渡と留置権
たとえば、不動産の売主Aで、第一譲受人をB(未登記)で第二譲受人をC(既登記)とします。

二重譲渡の未登記譲受人Bは、売主Aに対し履行不能による損害賠償債権を取得しますが、所有者Cからの明渡請求に対してBは留置権を主張して明渡しを拒否できません(最S43.11.21)。

・他人物売買と留置権
たとえば、所有者Cの不動産を、AがBに売買した場合です。

他人物売買の買主Bは、所有者Cからの返還請求に対して、Aに対する履行不能による損害賠償債権を被担保債権として留置権の主張ができません(最S51.6.17)。

留置権は、物の引渡しを拒否することにより債務の履行を間接的に強制する制度です。

しかし、留置権の行使を認めても、二重譲渡や他人物売買の売主は損害賠償請求権の履行を間接的に強制することにならないからです。

◇留置権が成立するためには、債権の弁済期が到来していることが必要です。

弁済期前に留置権を認めると、弁済期前に履行を強制することになるからです。

◇不法行為によって占有が始まった場合には、留置権は成立しません。
たとえば、盗人が盗品に修繕を加えても留置権は成立しません。

留置権は公平の観点からの規定です。不法行為による占有取得者に対して公平を考える必要はないからです。

・適法な占有がのち無権限占有となった場合
たとえば、建物の賃借人が賃貸借契約を解除された後、建物の不法占有中に必要費や有益費を支出した場合には、民法295条Ⅱ項の類推適用を認めて、留置権の成立を否定するのが判例です。

なお、適法に留置権を行使している期間中に支出した費用償還請求権については留置権の行使ができることは当然です。適法な占有だからです。

たとえば、賃貸借終了前の費用に基づいて留置権を行使しているときに、さらに費用をかけたときは留置権が成立します。

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